「鳥は、ゆかや棚(たな)や机(つくえ)や、うちじゅうのあらゆる場所(ばしょ)をふさぎました。梟(ふくろう)が目玉を途方(とほう)もない方に向(む)けながら、しきりに「オホン、オホン」とせきばらいをします。
ホモイのお父さんがただの白い石になってしまった貝(かい)の火を取りあげて、
「もうこんなぐあいです。どうかたくさん笑(わら)ってやってください」と言(い)うとたん、貝(かい)の火は鋭(するど)くカチッと鳴って二つに割(わ)れました。
と思うと、パチパチパチッとはげしい音がして見る見るまるで煙(けむり)のように砕(くだ)けました。
ホモイが入口でアッと言(い)って倒(たお)れました。目にその粉(こな)がはいったのです。みんなは驚(おどろ)いてそっちへ行こうとしますと、今度(こんど)はそこらにピチピチピチと音がして煙(けむり)がだんだん集(あつ)まり、やがて立派(りっぱ)ないくつかのかけらになり、おしまいにカタッと二つかけらが組み合って、すっかり昔(むかし)の貝(かい)の火になりました。玉はまるで噴火(ふんか)のように燃(も)え、夕日(ゆうひ)のようにかがやき、ヒューと音を立てて窓(まど)から外の方へ飛(と)んで行きました。
鳥はみんな興(きょう)をさまして、一人去(さ)り二人去(さ)り今はふくろうだけになりました。ふくろうはじろじろ室(へや)の中を見まわしながら、
「たった六日(むいか)だったな。ホッホ たった六日だったな。ホッホ」
とあざ笑(わら)って、肩(かた)をゆすぶって大股(おおまた)に出て行きました。
それにホモイの目は、もうさっきの玉のように白く濁(にご)ってしまって、まったく物が見えなくなったのです。
はじめからおしまいまでお母さんは泣(な)いてばかりおりました。お父さんが腕(うで)を組んでじっと考えていましたが、やがてホモイのせなかを静(しず)かにたたいて言(い)いました。
「泣(な)くな。こんなことはどこにもあるのだ。それをよくわかったお前は、いちばんさいわいなのだ。目はきっとまたよくなる。お父さんがよくしてやるから。な。泣(な)くな」
窓(まど)の外では霧(きり)が晴(は)れて鈴蘭(すずらん)の葉(は)がきらきら光り、つりがねそうは、
「カン、カン、カンカエコ、カンコカンコカン」と朝の鐘(かね)を高く鳴(な)らしました。
引用:青空文庫
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