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ホモイが、おとうさんやおっかさんや、兎(うさぎ)のお医者(いしゃ)さんのおかげで、すっかりよくなったのは、鈴蘭(すずらん)にみんな青い実(み)ができたころでした。
ホモイは、ある雲のない静(しず)かな晩(ばん)、はじめてうちからちょっと出てみました。
南の空を、赤い星がしきりにななめに走りました。ホモイはうっとりそれを見とれました。すると不意(ふい)に、空でブルルッとはねの音がして、二疋(ひき)の小鳥が降(お)りて(まい)りました。
大きい方は、まるい赤い光るものを大事(だいじ)そうに草におろして、うやうやしく手をついて申(もう)しました。
「ホモイさま。あなたさまは私(わたし)ども親子の大恩人(だいおんじん)でございます」
ホモイは、その赤いものの光で、よくその顔を見て言(い)いました。
「あなた方は先頃(せんころ)のひばりさんですか」
母親のひばりは、
「さようでございます。先日はまことにありがとうございました。せがれの命(いのち)をお助(たす)けくださいましてまことにありがとう存(ぞん)じます。あなた様(さま)はそのために、ご病気(びょうき)にさえおなりになったとの事でございましたが、もうおよろしゅうございますか」
親子のひばりは、たくさんおじぎをしてまた申(もう)しました。
「私どもは毎日この辺(へん)を飛(と)びめぐりまして、あなたさまの外へお出なさいますのをお待(ま)ちいたしておりました。これは私どもの王からの贈物(おくりもの)でございます」と言(い)ながら、ひばりはさっきの赤い光るものをホモイの前に出して、薄(うす)いうすいけむりのようなはんけちを解(と)きました。それはとちの実(み)ぐらいあるまんまるの玉で、中では赤い火がちらちら燃(も)えているのです。
ひばりの母親がまた申(もう)しました。
「これは貝(かい)の火という宝珠(ほうじゅ)でございます。王さまのお言伝(ことづて)ではあなた様(さま)のお手入れしだいで、この珠(たま)はどんなにでも立派(りっぱ)になると申(もう)します。どうかお納(おさ)めをねがいます」
ホモイは笑(わら)って言(い)いました。
「ひばりさん、僕(ぼく)はこんなものいりませんよ。持(も)って行ってください。たいへんきれいなもんですから、見るだけでたくさんです。見たくなったら、またあなたの所(ところ)へ行きましょう」
ひばりが申(もう)しました。
「いいえ。それはどうかお納(おさ)めをねがいます。私どもの王からの贈物(おくりもの)でございますから。お納(おさ)めくださらないと、また私はせがれと二人で切腹(せっぷく)をしないとなりません。さ、せがれ。お暇(いとま)をして。さ。おじぎ。ご免(めん)くださいませ」
そしてひばりの親子は二、三遍(べん)お辞儀(じぎ)をして、あわてて飛(と)んで行ってしまいました。
ホモイは玉を取りあげて見ました。玉は赤や黄の焔(ほのお)をあげて、せわしくせわしく燃(も)えているように見えますが、実(じつ)はやはり冷(つめ)たく美(うつく)しく澄(す)んでいるのです。目にあてて空にすかして見ると、もう焔(ほのお)はなく、天の川が奇麗(きれい)にすきとおっています。目からはなすと、またちらりちらり美(うつく)しい火が燃(も)えだします。
引用:青空文庫
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