はじめは仲間の石どもだけでしたがあんまりベコ石が気が
いいのでだんだんみんな馬鹿にし出しました。おみなえしが、
斯う云いました。
「ベコさん。僕は、とうとう、黄金のかんむりをかぶりまし
たよ。」

   宮沢賢治「気のいい火山弾」より
安比高原の「オミナエシ」
作品ID4440

ひるすぎ、野原の向ふから、又キラキラめがねや器械が光って、さっきの四人の学者と、村の人たちと、一台の荷馬車がやって参りました。
 そして、かしはの木の下にとまりました。
「さあ、大切な標本だから、こはさないやうにしてれ給へ。よく包んで呉れ給へ。こけなんかむしってしまはう。」
 苔は、むしられて泣きました。火山弾はからだを、ていねいに、きれいなわらや、むしろに包まれながら、云ひました。
「みなさん。ながながお世話でした。苔さん。さよなら。さっきの歌を、あとで一ぺんでも、うたって下さい。私の行くところは、こゝのやうに明るい楽しいところではありません。けれども、私共は、みんな、自分でできることをしなければなりません。さよなら。みなさん。」
「東京帝国大学校地質学教室行、」と書いた大きな札がつけられました。
 そして、みんなは、「よいしょ。よいしょ。」と云ひながら包みを、荷馬車へのせました。
「さあ、よし、行かう。」
 馬はプルルルと鼻を一つ鳴らして、青い青い向ふの野原の方へ、歩き出しました。



引用:青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/


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