ひるすぎ、野原の向ふから、又キラキラめがねや器械が光って、さっきの四人の学者と、村の人たちと、一台の荷馬車がやって参りました。
そして、柏の木の下にとまりました。
「さあ、大切な標本だから、こはさないやうにして呉れ給へ。よく包んで呉れ給へ。苔なんかむしってしまはう。」
苔は、むしられて泣きました。火山弾はからだを、ていねいに、きれいな藁や、むしろに包まれながら、云ひました。
「みなさん。ながながお世話でした。苔さん。さよなら。さっきの歌を、あとで一ぺんでも、うたって下さい。私の行くところは、こゝのやうに明るい楽しいところではありません。けれども、私共は、みんな、自分でできることをしなければなりません。さよなら。みなさん。」
「東京帝国大学校地質学教室行、」と書いた大きな札がつけられました。
そして、みんなは、「よいしょ。よいしょ。」と云ひながら包みを、荷馬車へのせました。
「さあ、よし、行かう。」
馬はプルルルと鼻を一つ鳴らして、青い青い向ふの野原の方へ、歩き出しました。
引用:青空文庫
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