楢男は、じっとそれを眺めて、ひとりごとを言いました。
「ははあ、これがさるのこしかけだ。けれどもこいつへ腰をかけるようなやつなら、ずい
ぶん小さな猿だ。」
                         宮沢賢治「さるのこしかけ」より


安比高原の「さるのこしかけ」
作品ID-469

楢夫ならおは夕方、裏の大きなくりの木の下に行きました。その幹の、丁度楢夫の目位高い所に、白いきのこが三つできていました。まん中のは大きく、両がわの二つはずっと小さく、そして少し低いのでした。
 楢夫は、じっとそれをながめて、ひとりごとを言いました。
「ははあ、これがさるのこしかけだ。けれどもこいつへこしをかけるようなやつなら、すいぶん小さなさるだ。そして、まん中にかけるのがきっと小猿の大将で、両わきにかけるのは、ただの兵隊にちがいない。いくら小猿の大将が威張いばったって、僕のにぎりこぶしの位もないのだ。どんな顔をしているか、一ぺん見てやりたいもんだ。」
 そしたら、きのこの上に、ひょっこり三びきの小猿があらわれて腰掛こしかけました。

引用:青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/

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